ステーキングとは
最近日本のポーカー業界でステーキングが注目されているので、海外にあるステーキングモデルについて書こうと思います。
自分はポーカーを始めたころは、何のためにステーキングが存在するのかよくわかりませんでした。
自分のバンクロールで参加できるトーナメントに出場し、優勝したときの喜びや負けたときの悔しさを全て自分自身で体感できる方が良いと思っていました。
ステーキングが存在する主な理由は、「スキルはあるけれどバンクロールがない」プレイヤーがいるからです。
ステーカー(投資家)は上手いプレイヤーに投資し、利益の一部をもらいます。
プレイヤーは投資してもらってリスクを減らしますが、リスクと共に本来の利益の一部をステーカーに渡します。
このように成立する関係になります。
上手くいって何年も続く関係になることもありますが、逆に崩れることもよくあります。
ステーキングは主に2種類あると思います。
1. フルステーキング
2. 一部のアクションを売るステーキング
フルステーキング
フルステーキングは、ステーカー(投資家)にフルフルでバイイン額を出してもらうことです。
利益はあらかじめ決めた割合でステーカーとプレイヤーで分けます。
負けた場合の損失はステーカーが負担します。
ポーカーの利益は一回きりのトーナメントやシリーズで出しにくいため、1年などわりと長い期間で行うことが多いです。
その際プレイヤーが先に負けるとなると、その負けた分がメイクアップになり、プラスになった時にそのメイクアップが先にとんとんになってからプレイヤーが利益を得ます。
ちょっと複雑なので例で説明します。
- Aさん(プレイヤー)とBさん(ステーカー)が1年間のフルステーキングの契約をします。
- Aさんが1年間ひたすら1000ドルのトナメに出続け、利益を50:50でBさんと分けます。
- Aさんが最初の10トナメは全くインマネできず、11回目のトナメで優勝して10万ドルの賞金を獲得できたとします。
メイクアップ= 1,000ドル × 10トナメ = 10,000ドル
Aさんの利益
= ( 賞金 − 11回目のトナメのバイイン – メイクアップ ) × 分け前%
= ( 100,000ドル − 1,000ドル − 10,000ドル ) × 50%
= 44,500ドル
フルステーキングはライブでも、オンラインでもよくあります。
ライブは個人と個人の間がほとんどですが、オンラインはファンドという形になるのが多いです。
ファンドは複数人のコーチを雇って見込みのあるプレイヤーを育てながらフルステーキングします。
プレイヤーは最初安いステークスから始めて、結果やパフォーマンスが良ければだんだんハイステークスに上がっていきます。
オンラインポーカー業界では最近特にロシアとブラジルのファンドが多いです。
一部のアクションを売るステーキング
自分のバイインの何割かをステーカーや友達に売る制度です。
1トーナメント単位で売ることもあれば、シリーズ単位でパッケージとして売ることもあります。
例えばWSOP中に合計10万ドルバイインのトーナメントに出る予定であれば、その何%かを売るプレイヤーがいます。
あと、上手いプレイヤーはマークアップを付けて売ることが多いです。
例えば、1,000ドルトーナメントに出た時のROIが30%だとします。
1,000ドルのトナメに出た場合、平均で1,300ドル勝ちます。
1ドルに対して1.3ドルが返ってきます。
そういうプレイヤーは自分のアクションを 1.2 のマークアップで売ります。
つまり1ドルバイインを1.2ドルで売ります。
そうしますと、ステーカーが投資した1.3ドルの価値のアクションを 1.2ドルで買うことになるので、平均0.1ドルプラスになります。
例えばこのプレイヤーの1,000ドルバイインの50%の500ドル分を600ドル(500 × 1.2 )で買ったとすると、理論上は650ドル(500 × 1.3 )が返ってきます。
つまり50ドルの利益になります。
プレイヤーのメリット
自分の想定される利益の一部を安く売ることでリスクを減らせる
プレイヤーのデメリット
利益が本来より減る
ステーカーのメリット
特に何もしないでプラスの投資ができる
ステーカーのデメリット
投資のリスク
アクションを売っているプレイヤーが本当に上手いのか、マークアップが適切なのかの見極めが難しいし、さらにいくら上手いプレイヤーだとしても少数のトーナメントで負けることが多いです。
最近ポーカープレイヤーのアクションを買えるプラットフォームがいくつかあって、そのプレイヤーと直接繋がっていなくてもウェブサイト上でアクションを買えます。
儲け目的で買っている人もいれば、応援目的で買っている人もいます。
スワップ
ステーキングとは少し違いますが、友人同士&スキルレベルの近いポーカープレイヤーたちは同じトーナメントに出る場合、アクションの一部(5-10%など)をスワップすることがよくあります。
最初からスワップすることもありますし、例えば二人とも似たようなスタックでDay2に進んでからスワップする人もいます。
そうすると、少しリスクヘッジもできますし、友人の応援もさらに面白くなります。
特に大人数のメインイベントなどでスワップすることが多いです。
一緒に勉強している複数人の友人とスワップして最終的に自分のアクションの半分ぐらいしか持っていないプロもいます。
ステーキング問題あるある
ステーキングは便利な制度です。
プレイヤーが本来バンクロール的に出ることのできないトーナメントに出られたり、ステーカーが儲けたりします。
一方、残念ながら問題になることもあります。
最後にステーキングでよく発生する問題をいくつかリストアップします。
分散の理解度
ポーカーの分散がどこまで大きいのかを分かった上でステーキングをしたり、受けたりしないといけません。
友人のポーカープロのアクションを買ったけど、それがゼロになって思ったよりダメージを受けるケースがよくあります。
メイクアップの重なり
フルステーキングをした場合、負けが重なってメイクアップが大きくなることがあります。
今出ているトーナメントに優勝したとしてもすべてがメイクアップ返しになるケースもあるので、その場合、自分自身の利益はゼロになります。
この状況になってしまったプレイヤーはモチベーション下がって、プレイに影響が出てさらに負けが重なることがあります。
だからこそフルステーキングをしているファンドはメンタルコーチも含めて複数人のコーチを雇ったり、ステーキングをしているプレイヤーのハンドを定期的にレビューしています。
僕の知り合いで、メイクアップが9万ドルまで重なってステーカーに切られる(負けた分を返さなくてもいいけど、契約廃止)の悪いケースもあれば、メイクアップが20万ドルまで重なったけどWSOPで一発逆転したケースもあります。
詐欺や不正
中には、アクションを売ったものの実際にはトーナメントに出場しなかったり、同じアクションを複数人に重複して売ってわざと負けるなど、不正が発生することもあります。
ステーキングをする場合、信頼できるプレイヤーにステーキングしましょう。
あと、密にコミュニケーションをとるようにしましょう。
因みに海外トーナメントで座った瞬間にバイインのレシートとチップの写真を撮ったり、負けた時にオールインハンドの写真を撮ったりする人はよく見かけると思いますが、それはだいたいステーカーに証拠を送るためです。